施工保守編<その2>
12_ROTDR方式での設計・施工の留意事項は何ですか
石油・化学プラントでのLNGタンクやパイプラインの漏れ、鉄鋼プラントでの高温炉体温度監視、電力線温度監視、ヤードやベルトコンベア・トンネル内の火災検知など、光ファイバの防爆性を生かした広範囲の温度分布測定を可能とします。また、特殊なフィールドとして地熱井や石油掘削のプラントの温度計測にも適用されています。
ROTDR方式では、微弱な反射光(散乱光)の強度を計測するので入射光量を多くとれるGIタイプのマルチモード光ファイバが一般的に使用されています。現時点(2011年9月)では、最大計測距離が2 kmである汎用品タイプ、6 kmおよび10 kmの高性能タイプ、そして最大30 kmまで計測できる超高性能タイプのものがあり、国内外の複数メーカーから販売されています。
また、使用される光ファイバにもいろいろなタイプのものがあり、代表的な種類と用途を図1に示します。
図1 温度計測用光ファイバケーブルの一例
基本的には一般通信用の光ケーブル構造のものでも温度計測は可能ですが、使用環境温度や熱応答性の点ではSUS管内蔵型のものが優れています。しかしながら、径が細く許容張力が低いので、キンクや光ファイバのロス増加が発生しないように注意して施工する必要があります。
特にSUS管型光ケーブルを使用する設計で考慮が必要なのは、高温環境や低温環境での温度計測です。光ファイバとSUSの線膨張係数は異なり、一般的に通常の金属と比較して石英ガラスの線膨張係数は1/10になっています。
このため、線膨脹係数は「SUS管>光ファイバ心線」であり、常温用途(許容温度:-20~60 ℃)で設計されたSUS管型光ケーブルを許容温度以上で使用すると、SUS管の伸びに光ファイバの伸びが追いつかず、SUS管内で光ファイバに過大な張力が加わり断線が発生してしまいます。逆に低い温度で使用すると、SUS管内部で光ファイバが弛み、マイクロベンドが発生し伝送損失が増加してしまうため、正確な温度計測ができなくなります。このため、使用環境温度にあわせて、高温時は光ファイバをSUS管内にSUS管よりも長く入れて製造し、低温時は光ファイバにプリテンションを加えて製造し、光ファイバの長さを短くしておく必要があります。
図2 温度変化時のSUS管内での光ファイバの挙動