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光ファイバセンサ概論(6)

基礎編<その1>(10)

基礎編<その2>(10)

基礎編<その3>(10)

基礎編<その4>(3)

設計編<その1>(10)

設計編<その2>(3)

施工保守編<その1>(10)

施工保守編<その2>(10)

施工保守編<その3>(7)

コラム(11)

施工保守編<その3>

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24_光ファイバセンサでは保守点検は必要ですか

事務局

 「構造」という言葉は全体を形作る諸要素の関係の在り方の総称です。この概念を物体に適用し、天然もしくは人工を問わず、物体の在り方を機能的に分類する概念が「構造体」です。科学技術の進歩に伴い、人間、動物、植物、地殻、橋梁、堤防、船、飛行機、列車、家屋や工場設備などの全てが構造体として理解する努力が続けられています。
 全ての構造体は変化しています。科学技術は、この変化における法則性を探索してきましたし、今後も継続することは言うまでもありません。この変化を把握し適切な対策を取ることは、その構造体の機能を維持するために不可欠です。すなわち、保守点検は不可欠です。
 人間は自体が感応器を有し、変状をおのずから判断し対応する能力があります。一方、人工の工業的な構造体自体には感応器はありません。人間によって、センサが取り付けられ、センサの出力変化を人間が把握するか人間の5感によって直接把握することになります。最近、工業的な構造体が大規模になったり、取り扱う物質が有害なものになってきたりしており、事故や災害を起こすと重大な社会的影響を及ぼすことになります。これを防止するためや構造体のライフサイクルコストを低減するために、構造体の全体の変状を把握する技術展開が始まっています。これまでの工業的な構造体では、その機能を発揮するためのセンサは取り付けられていましたが、構造体自体の変状を把握するセンサはほとんどありませんでした。センサがある場合でも、代表点測定に限られていました。構造体の全体の変状を把握するセンサを有する構造体をスマ-トストラクチャと称します。この分野では、光ファイバセンサは線状分布や多点測定が容易に可能なので適切なセンサシステムと期待されています。
 光ファイバセンサ自体も構造体で、保守点検は必要です。その機能性や全体の変状を把握し対策を取ることは不可欠です。光ファイバセンサは電気的センサと比較して、光ファイバの基本材料である石英系ガラスが大気中では安定した物質ですので長寿命が期待できます。この観点から、保守は必要ないとの極論に惑わされがちです。しかし、光ファイバセンサ自体も構造体であり、また光ファイバセンサは石英系ガラスだけで構成されているわけではありません。石英系ガラスの弱点である圧壊や曲げ、衝撃に弱いことを補強する補強材なども適用されており、電気的センサと同様に保守点検が必要です。線状分布測定用センサは長い線状体ですので保守対象が長くなりますが、OTDRなどを利用することにより、全線の状況を簡単に把握できます。
 保守点検には、対象、時期、内容を導入時に設定します。具体的には「だれが、どの時期に、どの対象に、どのような方法で現状を把握し、どのように処置するか」を設定します。
 保守点検対象としては、使用する部材としてのセンサ、センサの固定手段、保護手段、中継ボックス、伝送手段、計測器やPCなど、計測対象やデータ処理ソフトがあります。
 点検の時期分類を以下に示します。

                表1 点検の時期分類

 点検の時期分類

 時期区分としては、日常点検、定期点検と臨時(緊急)点検を考慮すべきです。システム自体に標準センサなどを組み込んだチェックシステムを内蔵させてセルフチェックを導入するとより効果的な保守点検が可能になります。定期点検は機能点検を主体とした通常点検と、全体にわたりかつ詳細な点検をする総合点検に分類して対応します。臨時点検は緊急性の中味により点検内容を検討します。 
 「だれが」については、光ファイバセンサを施工した人や組織がベストですが、常駐しない場合が一般的ですので使用者側で日常点検することになります。その内容と処置方法は事前に決めておく必要があります。定期点検と緊急点検は光ファイバセンサを施工した人や組織が加わって実施すべきです。総合点検は光ファイバセンサを施工した人や組織が主体となって実施すべきです。
 落雷、事故や災害により停電が発生した場合や計測不能になった場合の処置は必ず事前に決めておく必要があります。

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