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光ファイバセンサ概論(6)

基礎編<その1>(10)

基礎編<その2>(10)

基礎編<その3>(10)

基礎編<その4>(3)

設計編<その1>(10)

設計編<その2>(3)

施工保守編<その1>(10)

施工保守編<その2>(10)

施工保守編<その3>(7)

コラム(11)

設計編<その1>

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02_光ファイバセンサの精度、分解能および適用用途の目安

事務局
OTDRは、元来、光ファイバの製造あるいは布設工事の際に用いる計測器で、光ファイバの特性評価を詳細にかつ正確に計測する能力を有します。しかし、OTDRをセンサ用途で使用する場合は、それらの中で必要な機能のみを理解すればよいでしょう。

ここでは、光ファイバが曲げ損失を利用したセンサ(曲げ損失検知センサ)として使用されることを想定して、OTDRの仕様・性能の見方を紹介します。

1.計測波長、光ファイバ、コネクタ
曲げ損失検知センサの設計仕様に合致する、波長、計測対象の光ファイバ、コネクタを有するOTDRを選択します。
一般的には、波長が長くなると、曲げ損失に敏感(損失量が大きくなる)になります。多点センサとして使用する場合は、設計上、1つのセンサ部での曲げ損失をどれだけ見込んでいるのかに注意する必要があります。

2.距離レンジ
光ファイバの全長にあわせて距離レンジを設定します。光ファイバの全長より短い距離レンジを選択すると、不要な波形(ゴースト)が測定波形上に重畳することがあります。一方、距離レンジを長くすると、計測時間もそれに伴い長くなります。

3.サンプリング分解能
サンプリング分解能は、データを取り込む距離間隔のことです。通常は、距離レンジの設定に連動して自動的に設定されます。手動でも設定可能です。

4.アッテネーション(アッテネータ)
アッテネーションとは、内蔵しているアンプの増幅度のことを指します。OTDRでは、アンプの増幅度が大きすぎるとフレネル反射や入射端から近い距離からの散乱光が飽和状態になってしまい、反射量や反射減衰量が正しく測定できない場合があります。

OTDRのアッテネーション機能を利用して反射光のレベルを適切にすることで正確な測定を行う事ができます。アッテネーションは、値が小さいほど増幅度が大きくなります。

アッテネーションが小さいほどS/N の良い波形を取得することができますが、上述のような動作に注意を払う必要があります。最近の機種では、パルス幅を設定すると自動的に最適なアッテネーションが設定されますが、画面上で波形を確認しながら最適値を手動で設定することも可能です。

5.群屈折率
光ファイバの実効屈折率を表す値です。距離計測は群屈折率の値を使用して算出されます。したがって、群屈折率が正確に設定されていないと、距離計測に誤差が生じます。距離計測にそれほどの精度を求めないときはデフォルト値(メ-カーであらかじめ設定している値)を使用してもかまいません。

6.しきい値
多くの機種では、計測波形より接続損失(段差 = 曲げ損失量)を自動で検出する機能を有しています。しきい値を適切に設定することで、所定の曲げ損失が発生した場合の自動検出が可能になります。

7.パルス幅
 パルス幅とは、光ファイバに入射する光パルスの幅のことです。短いパルス幅を使用する場合は、高い空間分解能(曲げ損失検知センサの場合は、近接した2つのセンサ部を区別して、それぞれの曲げ損失を正確に測定できる最小区間と考えてください)での測定が可能ですが、長距離計測ができません。長いパルス幅では、長距離計測ができますが、高い空間分解能での計測ができません。

 たとえば、パルス幅10 nsec、100 nsecでの空間分解能は、それぞれおおよそ1 m、10 mとなります。また、パルス幅が2倍になるとダイナミックレンジは約1.5 dB向上し、逆にパルス幅が1/2倍になるとダイナミックレンジは約1.5 dB悪化します。
 光ファイバの損失、検出したい曲げ損失量、隣接する2つのセンサ部の間隔、計測時間などから最適なパルス幅を選択します。
 
8.平均化回数(計測時間)
OTDRでは、光パルスを何回も発光させて散乱光を平均化することで、計測精度を向上させています。機種にもよりますが、平均化回数あるいは平均化時間(計測時間)を設定します。

平均化回数、平均化時間の値が大きいほど、精度の高い計測結果を得ることができます。OTDRの性能指標であるダイナミックレンジと、計測する光ファイバ(センサ部を含む)の損失などを考慮し最適値を設定してください。

なお、計測時間の設定は断線検出の場合は約10 sec、しきい値検出(曲げ損失検知センサ)の場合は約1 minが目安となります。

たとえば、計測時間が2倍になるとダイナミックレンジは約0.75 dB向上し、逆に計測時間が1/2倍になるとダイナミックレンジは約0.75 dB悪化します。

9.デッドゾーン
アッテネーションデッドゾーン(後方散乱光デッドゾーン)とは、コネクタ接続点より損失計測可能な最小距離を、デッドゾーン(フレネルデッドゾーン)とは、2つのコネクタ接続点を識別可能な最小距離を示します。光の入射点あるいは光ファイバの途中にコネクタを使用する場合は、アッテネーションデッドゾーンの値に注意を払いながら、センサ部の位置を設定する必要があります。

10.ダイナミックレンジと検出可能な曲げ損失量の関係について
 図1に示すように、後方散乱光レベルがノイズレベルになるまでの損失許容範囲をダイナミックレンジ(D.R. : Dynamic Range)として表します。ダイナミックレンジはOTDRの計測可能距離を示しているともいえます。

OTDRを曲げセンサ用途に用いる場合は、検知できる最小曲げ損失量が重要になります。着目点(位置)におけるΔD.R.(ダイナミックレンジ上の余裕)を知ることで、その着目点(位置)におけるノイズ量(dBp-p)を推定することができます(図2)。このノイズ量を越える曲げ損失量が検出可能となります。特に、

• 検知すべき曲げ損失量
• OTDRの性能(特にダイナミックレンジ)
• 光ファイバ(センサ部を含む)の損失
• 計測時間

などは相互に依存しています。これらの関係をよく理解した上で、システム設計、計測器の選択および計測パラメータの設定を行うことが重要です。

図1
図1 OTDR波形とダイナミックレンジ

図2
図2 着目点におけるノイズ幅(理論値)

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