光ファイバセンサ概論
03_光ファイバセンサシステムの構成<2>
つぎに、聞きなれない用語かもしれませんが、光ファイバセンサ以外のセンサでは実現が難しく、たいへん魅力的な特長である、分布計測(distributed sensing)および準分布計測(quasi-distributed sensing)について説明します。
図4は、これら2つに加えて単点計測(point sensing)、多点計測(multiplexed point sensing)、領域計測(integrating sensing)を加えた計測形態を示しています。
単点計測とは、ある一点を凝視して情報を取得する方法です。この場合、計測器からはある時間にある一点の情報(検出量)が1つだけ得られ、時間をtとすれば検出量はS(t)と表せます。これは、たとえば、抵抗線歪ゲージや熱電対などのように最も一般的な方法で、比較的簡単な光学部品で構築できるタイプの光ファバセンサです。
多点計測とは、多数の点情報を一挙に取得することができる構成で、1つ以上の計測部を持つ多数の光ファイバを最終的に一本の光ファイバにまとめることで実現されます。それぞれの計測部の検出量は、時間差や周波数、波長などの二次的な情報(計測量に影響されない情報)をもとに分離検出することができます。
この場合、各計測部をnとすれば検出量はS(t,n)と表せます。図4(b)にははしご型(ladder)のトポロジーを示していますが、いわゆるネットワーク機器のトポロジーと同様に、スター型(star)、ツリー型(tree)、バス型(bus)などの構造をとることができます。
つぎに領域計測とは、任意の長さの光ファイバを計測部領域とし、その領域の平均的な物理量を計測するものです。この場合単点計測と同様に、計測器からはある時間にある1つの領域の情報が1つだけ得られます。
準分布計測とは、一本の光ファイバの特定位置に計測部を配置した構成で、多点計測と同様の方法によって分離検出します。この場合、各計測部の情報は不連続な位置情報も合せて得ることができます。準分布計測は直列型(serialまたはline)の多点計測として分類することもできますので、検出量は多点計測と同じように表すことができます。
最後に分布計測とは、光ファイバ全長にわたり任意の位置を計測部として作用させることができる構成で、計測部の情報は連続な位置の情報と合せて取得することができます。この場合、位置をzとすれば検出量はS(t,z)と表せます。
多点、準分布、分布計測における計測器は、計測量の時間変化だけではなく、信号処理などを介して位置情報を含めて出力するため、アナライザ(analyzer)、インタロゲータ(interrogator)などと呼ばれることもあります。
図4 光ファイバセンサの各種計測形態
単点計測と多点計測は図3に示したいずれの構成でも実現が可能です。領域、準分布、分布計測は光ファイバ自身を計測部とする光ファイバセンサ(intrinsic)で多くみられる形態ですが、任意の計測部に変換器を取付けること(extrinsic)も可能です。
計測部ごとに変換器を変えれば、1つの計測器で複数の計測量を多点で取得することもできます。また図4では(b)の多点計測以外は反射型の構成方式で示されていますが、透過型で構成することも可能です。
以上のことから、光ファイバセンサは、線状の計測対象において連続的な計測量を得ることができ、光ファイバを往復させることで面的な情報を得ることも可能です。また遠隔計測と各種の変換器を組み合わせることで、大規模構造物などの人工物や市街地のほかにも海や山、川といった自然環境を対象として、広範囲で多様な情報が一挙に取得できます(図5)。
このとき、安価な通信用の光ファイバおよび光部品をそのまま利用できる光ファイバセンサは、コストの面でも優位性を持つことができるのです。
社会的インフラ(自然災害状況をモニタし被害を事前に察知)
図5-1 光ファイバセンサによる遠隔・広域モニタリング
道路や鉄道などの公共交通機関(異常や施設劣化状況を監視)
図5-2 光ファイバセンサによる遠隔・広域モニタリング
プラント施設(設備の異常監視、省エネルギやエコに貢献)
図5-3 光ファイバセンサによる遠隔・広域モニタリング
防 災(異常温度や火災などを監視)
図5-4 光ファイバセンサによる遠隔・広域モニタリング