基礎編<その1>
03_光ファイバの種類は<1>
光ファイバとは、“光を導く細い繊維”という意味であり、図1のように、光が伝搬する“コア”と呼ばれる部分と、その周辺を覆う同心円状の“クラッド”と呼ばれる部分の2種類の透明な誘電体(ガラスやプラスチックのように導電性のない物質)から構成されています。
クラッドの屈折率をコアのそれよりも少し(0.2〜0.3%)小さくすることにより、光の全反射現象を利用して、光信号をコアの中に閉じこめて伝送するものです。
図1 光ファイバの基本構造
光ファイバは、髪の毛ほどに細いといわれていますが、これは、最も一般的な光ファイバでクラッドの外径が125 µm(0.125 mm)であり、光を伝えるコアは、数〜数十µm(1 µmは1×10−3 mm)とさらに細いことをいうものです。
これらの値は、必要とする伝送特性や機械特性などから考慮して決められるもので、光ファイバは優れた伝送特性に加え、細くて軽いといった特長を兼ね備えています。
光ファイバ中での光の伝搬の仕方には幾通りかあり、それぞれをモードといいます(4-1-1 参照)。複数のモードを通す光ファイバをマルチモード(多モード)光ファイバ(Multi Mode optical fiber:MM)といいます。
その中でもコア内の屈折率分布が一様である光ファイバをステップインデックス(SI)型光ファイバといい、コア内の屈折率分布がゆるやかに変化した光ファイバをグレーデッドインデックス(GI)型光ファイバといいます。
インデックスとは屈折率(refractive index)を指しています。コア径を小さくしていくと伝搬できるモードが減っていき、ついには基本モードだけが残ります。このように1つのモードのみを通す光ファイバをシングルモード(単一モード)光ファイバ(Single Mode optical fiber:SM)といいます。光ファイバの種類を図2に示します。
図2 光ファイバの種類
では、光ファイバセンサに利用している光ファイバにはどのような種類があるでしょうか。光を伝えるという点では、センサ用の光ファイバと通信用の光ファイバに大きな構造の違いはありません。
光ファイバセンサに使用する光ファイバも、通信用に使用する光ファイバも、この構造の光ファイバを使用します。
光ファイバセンサの多くは、通信用光ファイバに接続して利用したり、通信用光ファイバ自体をセンサとして利用したりしています。
もう少し詳しく光ファイバの構造について説明します。光ファイバはプリフォームと呼ばれるガラスの母材を融かして線引きして製造します。この状態を裸ファイバと呼んでいます。
光ファイバはガラスでできているため、表面に傷があると外部応力によって破断してしまいます。そこで表面を保護するために、線引き直後、光ファイバの表面を被覆して(緩衝層)、傷の発生を防止するとともに、側圧などの外力に対して光ファイバを保護した構造としています。
この一次被覆を施した光ファイバを光ファイバ素線と呼んでいます。最近の光ファイバの緩衝層被覆材には、加工性、価格を考慮して、紫外線硬化型(UV)樹脂が主に使用されています。
この光ファイバ素線に、強度向上や着色のために、UV樹脂、ナイロンやテフロンなどを更に二次被覆した構造とし、この状態の光ファイバを光ファイバ心線と呼んでいます。光ファイバ心線は1本(心)のものを単心光ファイバ、4本(心)や8本(心)といった単心光ファイバを横に並べて複合、被覆したものをテープ心線と呼んでいます。
通信用に使用する光ファイバは、できるだけ外部環境(主に引張りによる歪や圧力など)の影響を受けないように設計・製造・布設されますが、センサに使用する光ファイバは、そのセンサとしての機能を発揮するために、外部環境に敏感に反応しやすいケーブル構造として加工を施し、被測定環境に布設、または固定して使用します。
光ファイバ単心やテープ心線をさらに厚い被覆で覆った光コード、数心~千心といった複数の光ファイバを束ねて、堅牢な溝付介在物(スロット)やがい装材(シース)で保護したものが光ファイバケーブルです。
光ファイバケーブルには、中心にテンションメンバを有するスロットと呼ばれる樹脂形成された構造があり、このスロットにはらせん状もしくはSZ状の溝が加工されており、この溝内に光ファイバ心線が収納されています。
【SZケーブルとは?】
光ファイバケーブルに限らず、電線は可とう性(柔軟性)を持たせるために、複数の心線を撚り合わせて構成しています。撚る方向によって、S撚り、Z撚り、そして、S撚りとZ撚りを合わせたSZ撚りという種類があります。
“S”と“Z”の表記は、図3に示すように撚り方向を表しています。SZ撚りケーブルは、これらを組み合わせた撚り方法で、図4のようにケーブルを切断せずに、光ファイバ心線を外部に出せること(中間分岐できること)が特徴です。
S方向とZ方向に交互に撚っているので、ケーブル被覆を剥いて、複数心の光ファイバの一部のみを取り出して切断し、センサなどの光ファイバや機器に接続することができます。利用しない光ファイバは切断しないで、そのまま残しておくことができます。
図3 ケーブルの撚り方向と名称
図4 SZ(撚り)ケーブル