コラム
C07_デシベル(dB)、dBm、ダイナミックレンジとは?
物理の分野では10倍から100万倍以上の大きな比の値を日常的に使用しています。例えば、最も電気を通しやすい銀と電熱線に使われるにクロムとの比抵抗は約100倍違います。銀と絶縁体のガラスとの比較では10の18乗倍、すなわち10億の10億倍も違います。
このような大きな比を扱うには対数を用いるのが便利です。ある比の値Aに対して10log(10)Aを「デシベルで表した値」と呼びます。もともとlog(10)Aで表わした値をベルという単位に定めたのですが、単位が大きすぎるので1/10のデシベルという単位が通常用いられています。例えば10倍は10dB、100万倍は60dB、10の18乗倍は180dBという具合に表記されます。
デシベルは電気、電子工学の分野では日常的に使われています。例えば電力が2倍になる場合10log(10)2=3.01ですから、2倍を3dBアップ、1/2を3dBダウンなどと言います。
電圧、電流の場合にもデシベルを用いますが、電力は電圧や電流の2乗に比例するので電圧、電流の場合には10log(10)の代わりに20log10を用います。こうすると例えば電圧が3dBダウンしたときに電力も3dBダウンすることになるからです。
デシベルは比の単位なので比較する基準値を決めれば絶対値の単位としても使うことができます。高周波や光の分野でパワーを表わすのによく用いられる単位にdBmがあります。これは1mWのパワーを基準値として0dBmと定めた単位で、AmWのパワーは(10log(10)A)dBmと表わされます。すなわち、10mWは10dBm、1000mWは30dBmになります。
デシベルを用いて表わされる重要な値の一つにダイナミックレンジがあります。増幅器や計測器で扱うことのできる最大の信号レベルと最小の信号レベルとの比をダイナミックレンジといいます。入力信号を大きくしていくとこれらの機器では出力信号が入力信号に比例しなくなります。これを飽和現象といい最大の信号レベルは出力信号が飽和し始めるレベルで決まります。
最小の信号レベルは機器の雑音レベルで決まります。機器ではないですが人間の耳を例にとってみましょう。誰もいないコンサートホールのような静かな場所にいてもわずかな音が漏れ聞こえます。これが雑音レベルです。
雑音レベルより小さな音は雑音にまぎれて聞こえません。この雑音レベルを0dBとすると地下鉄の中の騒音は図1に示すように音の振幅が1000倍の60dB、近くで聞くジェット機の爆音は100万倍の120dBと言われています。
人の耳はこれらを聞き分けることができますのでダイナミックレンジは120dB以上になります。因みにトランペットの音をすぐ近くで聞くと80dB位の音量変化が出るようです。これは音を発生する側ですがこれもダイナミックレンジといいます。
図1 音のレベルと人の耳のダイナミックレンジ