基礎編<その3>
22_FBGセンサはどのように計測しますか
光ファイバを通してFBGに光を入射し、その反射光を観測します。市販のFBG計測器は、光源、受光器、データ解析回路から構成されています。
光源としては、広帯域光源、波長掃引光源、単一波長光源などが使用されます。広帯域光源を使用した場合には、受光部には、分光器が必要になります。
図1にその構成を示します。広帯域光源から出射された広帯域光は、光ファイバを伝搬してFBGに入射されます。それぞれのFBGは、ブラッグ波長と等しい光成分を反射し、それ以外の光成分は透過します。
この反射光のスペクトラムを分光器で観測し、スペクトラムの中心波長をブラッグ波長として出力します。
図1 白色光源+分光器型FBG計測器
波長掃引光源を使用したFBG計測器を図2に示します。
このFBG計測器の受光部には、通常の受光器が使用されます。波長掃引光源から出射された光はFBGで反射され、受光器で受光されます。
波長掃引光源の出射波長を横軸に、受光器の出力を縦軸にプロットすれば、FBGスペクトラムを得ることができます。このFBGスペクトラムからブラッグ波長が計算されます。
図2 波長掃引光源+受光器型FBG計測器
単一波長光源を使用する場合、その発振波長は、FBGスペクトラムのスロープ部にチューニングします。
図3に示すように、FBGのブラッグ波長がシフトすると、反射率が変化するため、反射光を受光すれば、ブラッグ波長の変化を観測することができます。
図3 単一波長光源+受光器型FBG計測器
通常、1つのFBG計測器には、複数のFBGが接続されます。それぞれのFBGのスペクトラムを分離して観測するために、波長分割方式と時間分割方式が利用されています。
波長分割方式では、それぞれのFBGのブラッグ波長が重ならないように設定します。各FBGは温度あるいは歪により反射スペクトラムがシフトしますので、ブラッグ波長の間隔は、予想される波長シフトよりも大きくする必要があります。
たとえば、歪測定を行う際に、最大歪が2000 µεであるとすれば、ブラッグ波長は、最大2.4 nmシフトします。マージンを2倍とれば、1つのFBGが使用する波長域は約5 nmとなります。
広帯域光源あるいは波長掃引光源の波長域が80 nmであるとすれば、80÷5=16本のFBGを接続することができます。
図4に実際のFBGスペクトラムを示しました。これは、波長間隔5 nmのFBGを4本接続した例です。ブラッグ波長のシフトが大きすぎて、隣のFBGスペクトラムまで到達してしまうと、それぞれのFBG反射スペクトラムを分離することができず、正確なブラッグ波長を測定することができなくなります。
図4 波長分割方式で観測されたFBGスペクトラム
時間分割方式では、光がFBG計測器とFBG間を往復する時間の違いにより、それぞれのFBGスペクトラムを時間軸上で分離して観測します。
広帯域光源と分光器型FBG計測器での例を図5に示します。図のように、広帯域光源とFBGの間に光スイッチが配置されます。この光スイッチはONのときに開口して光を通過し、OFFのときは閉口して遮断します。
光スイッチに時間幅wのON信号が入力されると、時間wの広帯域光が、光ファイバを伝搬しFBGまで到達します。そしてFBGで反射され再び光スイッチに入射します。光スイッチは、最初の開口からτ時間後に、再び開口します。光スイッチとFBG間の光ファイバ長をL、その屈折率をn、光速をcとすれば、
L=τc/(2n)
となるFBGからの反射スペクトラムのみが、光スイッチを通過できます。したがって、τを調整すれば、任意のFBGからの反射スペクトラムのみを観測することが可能となります。
時間軸で分離して観測できるため、全てのFBGは同じ反射波長でも観測できます。この場合、後段のFBGまで光を到達させるために、FBGの反射率を1%以下にします。
また、単一波長光源+受光器型FBG計測器の光出力に信号を重畳し、受光信号を復調することによって、個々のFBGからの信号を分離させる方式も市販されています。
図5 時間分割方式の原理図
表1に波長分割方式と時間分割方式の特徴を示しました。それぞれに長短所がありますが、市販品の多くは、波長分割方式を採用しています。
表1 波長分割方式と時間分割方式の特徴