施工保守編<その1>
03_施工にはどのような機器が必要か
光ファイバセンサシステムは、大きく分けると、センサ部、センサ部と計測器の間を通信する光伝送部、計測器本体とそれを制御し得られたデータを計測値に変換演算したりするパソコンなどの情報処理装置、計測対象の状況を画面や警告音で表示する監視用PCから構成されます。
図1 光ファイバセンサシステムの構成
光ファイバセンサシステムの施工に必要な工具/機器類には、以下のようなものがあります。
1)伝送路となる光ファイバの切断・接続に使う工具/機器
1)伝送路となる光ファイバの切断・接続に使う工具/機器
2)伝送路となる光ファイバの接続確認に使う工具/機器
1. 伝送路となる光ファイバの切断・接続に使う工具/機器
1.1 シースストリッパ
シースストリッパとは光ファイバケーブルの被覆(がい装)を剥ぐための工具です。
図2 光ファイバケーブルの被覆(シース)を剥ぐ工具の例
図3 シースストリッパの利用イメージ図
1.2 スロットロッド除去工具
スロットロッド除去工具とは光ファイバケーブル内部のスロットを除去する工具です。
■ 除去方法
① ② ③
①スロットに直角に刃をいれ、回りを一周させ輪切りにします
②スロットの中心に向かって平行に一箇所刃を入れ工具をひねってスロットを取ります
③完了
図4 光ケーブル内のスロットを除去する専用工具の例
1.3 光ファイバストリッパ
光ファイバストリッパとは、光ファイバ心線の薄い保護被覆(UV被覆やナイロンジャケットなど)を剥ぐ専用工具です。
図5 光ファイバ心線の被覆を剥ぐための工具例
1.4 光ファイバカッタ
光ファイバカッタとは、光ファイバを融着接続する前に、光ファイバの端面をきれいに切断するための専用工具です。
図6 光ファイバ端面をきれいに切断するカッタの例
1.5 素線分離工具
素線分離工具とはテープ心線などの複数心線を1心ごとに分離するための専用工具です。
図7 テープ心線を1心ごとに分離するための工具例
1.6 融着接続機
融着接続機とは、光ファイバ先端をアーク放電により融かして接続するための光接続専用の工具です。
図8 光ファイバを接続する融着接続機の例
2. 伝送路となる光ファイバの接続確認に使う工具/機器
2.1. 光パルス試験機(OTDR)
光ファイバの接続後に、光ファイバ伝送路が正しく接続されているか、融着箇所や光ファイバを成端接続箱に収納した際に曲げなどで伝送損失が発生していないか、所定の場所まで光ファイバが繋がっているかなどを確認する装置です。
図9 光パルス試験機の例(短距離用)
2.2. 光 源
光ファイバ伝送路の片端から光を入射する光源です。光パワーメータや心線識別機などと組み合わせて使います。通常、光ファイバを伝搬する光は赤外線の波長帯を使いますので目では見えません。一方、光ファイバが短距離の場合、赤色を発光する光源を用いて、光ファイバが切れている場所を確認する方法があります。この場合、赤色の可視光線を使うので、光ファイバの切断箇所が赤く光ることで異常個所を特定することができます。
図10 施工に使う光源の例
2.3. 光パワーメータ
光源と組み合わせて使用し、光源からの光が正常に届いていることを確認します。また光ファイバセンサシステムで使用する計測器からの光が正常なレベルで届いているかどうかを確認することもできます。
図11 光パワーメータの例
図12 光パワーメータでの心線識別方法
2.4. 心線識別機
光源と組み合わせて使用し、ケーブル内の複数本の心線のうち、どの心線が光源と接続されているかを識別するための工具です。たとえば、すでに布設されている光ケーブルから、特定の心線を分岐させたり切断したりする場合に、誤って運用中の別の心線を切断しないよう、心線を識別する場合などに利用します。
図13 光ファイバ心線識別機の例
図14 心線識別機による計測方法
2.5. 光通話機
光ファイバの接続、接続後の確認作業などは、光ファイバは長距離伝送可能なゆえに、光ファイバケーブルの両端側での作業箇所が遠く離れている場合が多く発生します。光通話機を両端に接続すれば、遠方の作業箇所どうしで通話をしながら接続作業、確認作業を行うことができます。
図15 光ファイバ通話機の例
3. 光ファイバセンサの動作確認
センサ設置とケーブル布設がうまく行ったかどうかの判断は、最終的にはシステムで使用する計測器を使用して、測定対象に変状を与えて所定の測定値を得られるかどうかによります。施工中のチェックにはOTDRにて光ファイバの伝送光損失が大きい箇所や断線の有無や発生箇所を調査したり、センサ部から光が戻ってきているかを確認したりします。留意すべき点は、OTDRや光源、施工用の機器類の波長を、光ファイバセンサシステムが使用している光の波長と同じにして検査・確認することです。たとえば、1550nmの光は1310 nmの光よりも曲げに敏感なので、光源が1310 nmのOTDRで伝送路の確認をしても、光ファイバセンサシステムが1550 nmの光を使っている場合、損失発生個所を見逃す可能性があります。