施工保守編<その1>
05_どのような環境を考慮して施工したら良いですか
適用場所を検討する場合は、計測目的を考慮して、その場所の環境特性と使用する部材、センサの使用される環境に合わせて、センサに耐久性を持たせた設計とする必要があります。環境特性を検討する場合は、環境という言葉を、部材、センサに影響を与えるすべての廻りの状況を意味すると理解すべきです。一般的には大気環境などの雰囲気を環境として取扱いがちですが、狭い視野での検討だけでは耐久性に見落としが生じ、計測目的を達成できない場合があります。環境特性を考慮する場合には広い視野での検討が必要です。図1は環境特性を検討する場合の代表的な視点を表したものです。
図1 環境特性を検討する場合の代表的な視点
環境特性を、化学的反応性、力学的反応性、物理的反応性、生物による害と部材の自己変質性の観点から説明します。環境特性は複合的かつお互いに加速させる現象として発現する場合が多いのです。これらの現象は、環境と部材間だけでなく部材どうし間にも生じます。最終的にはその環境に曝してみないと耐久性の精度の高い評価はできないのも事実ですが、これまでの工業的適用に際して不具合を起こし様々な解析が行われ技術が蓄積されています。一例として、センサの保護管や固定具と使用している金属での応力腐食割れを説明します。
冷間加工や溶接をした金属内部に内部応力が残存し腐食環境に曝されると応力腐食割れが発生しますが、対策として金属を適切に焼鈍し、内部応力を除去することにより改善されることが知られています。金属に曲げ加工を施した場合で説明します。金属は多結晶体です。通常部は比較的大きな結晶からなっていますが、曲げ部は細かい結晶になっています。これは、曲げ加工により結晶が細粒化されているからです。結晶粒界が増え、この部分に応力が内部応力として残存します。その結果、曲げ部は活性化されている状態で、腐食という化学的反応が進行しやすいことになります。適切な焼鈍をすると結晶粒が回復して活性化状態が開放されます。逆に焼鈍条件によっては、ステンレス鋼などでは結晶粒界にクロムカーバイトという金属間化合物を合成してしまう鋭敏処理になってしまい、粒界腐食を加速することになりますので気を付けて下さい。
図2 金属での応力腐食割れの概念